第16回 1月16日(日) 大田市 畜産(和牛)編

大田市は、島根県内でも特に畜産業が盛んな地域です。本日は、和牛繁殖の自営就農に関する就農情報を新規就農者に対する歓迎ムードが高い温泉津町和牛改良組合の取り組みにスポットをあててお伝えします。
右から大田市の渡邊さん、温泉津町和牛改良組合の厚朴(ほおのき)さん、JAしまねの山崎さん、司会でおなじみ公社の高橋です。大田市の概要や就農プランについて大田市の渡邊さんより、畜産の産地概要についてJAの山崎さんから説明をしていただきました。
産地ツアー大田市畜産説明資料(PDF)

 

繁殖経営とは、母牛を飼育して生まれてきた子牛を販売することで収入を得る産業で、畜産業としては比較的初期投資が少ないため、個人での参入が可能な分野となっています。大田市内でも温泉津町和牛改良組合は、地域の農家らによる受入体制が特に充実しています。

実際に和牛繁殖に取り組まれている厚朴さんにお話を伺いました。
Q どのくらいの規模で経営をしていますか?
A 母牛14頭、子牛7頭です。
Q 和牛の飼育をはじめられたきっかけを教えてください。
A 子供の頃、親が乳牛をしていました。その後自分の代になり、和牛に転換、増頭して繁殖経営を始めました。跡継ぎは意識していましたが、それよりも畜産をやりたいという気持ちがとても強かったです。
Q 経営する中で1番大変なことは何ですか?
A 病気や事故を日頃から気をつけること、少しの変化や兆候をいち早く見つけ、予防に努めることです。
Q 経営を行う上で、特に工夫していること、意識していることはありますか?
A 高く売れることは大事なことですが、お客さま(肥育農家)の立場になると、ただ高いだけではいけないと思っています。 牛は、いたずらする時もありますが、とても可愛い存在であり、相棒であり、毎日楽しみながら収入が得られることは、大変でも続けられるところだと思っています。
Q 温泉津町和牛改良組合をはじめとする大田地域で畜産で就農をする強みや魅力を教えてください。
A 大田市の畜産は経営規模の大小に問わず熱心な農家が多いので、色んなパターンでの就農相談にのってくれる先輩農家がたくさんいます。また関係機関においても技術や知識もあり心強い環境だと思います。また、繁殖農家から肥育農家へ牛をバトンタッチするにあたり、肥育農家が褒めてくれることは、仕事をする上での物差しになります。
Q 大田地域の和牛生産をどのように発展させていきたいですか?
A 今後、石見銀山和牛のブランドがもっと知られていくこと、地元で生まれた牛が地元で育つ和牛の産地になるように地域をあげて発展させたいと思っています。
Q 畜産で就農を考えているみなさんにアドバイスをお願いします。
A 畜産で就農を目指す地域としては、とても条件がいいところだと自信を持って言えます。しかし実際の経営については、本人の自覚と努力がとても必要になります。また、地域の人との関わりも大事です。牛飼いという仕事をしながら楽しく大田市で暮らしましょう!

現地中継では、大田市温泉津町にある松本さんの牛舎からお伝えしました。左から県西部農林水産振興センターの錦織さん、大阪から移住後、令和2年から経営を開始された松本さん、パートナーの知子さん、地元で農家の後継者として6年前に就農された吉田さんです。

Q 松本さん、就農からこれまでの経過と現在の経営状況を教えてください。
A 令和2年5月に就農し、6月に母牛とする雌子牛を購入して経営をスタートしました。令和3年7月から順次子牛が生まれており、現在は、育成中の牛も含めて母牛は15頭、子牛は14頭います。
Q 施設や機械の保有状況、現在の労働力は?
A 牛舎は、もともと乳牛を飼われていた牛舎で、廃業されて使われなかった牛舎を借り受けて修繕や改装をして使っています。3月には新しく子牛の牛舎が建つ予定です。機械は、昨年購入したホイルローダーのみ所有。労働力は、私をメインに、知子さんに0.5人役程度の作業を担ってもらっています。
Q 牛を飼う技術はどのように身につけられましたか?
A 沖縄県の久米島で4年間牛を飼っていました。基本的な技術はそこで身につけました。
Q 数ある就農候補地の中でここ大田市を選んだ理由は?
A 独立して和牛繁殖をやりたいと思っていたところ、知り合いから島根県の情報をもらい、一旦、他地域で半年間研修をしながら、就農場所の情報を集め大田市にたどりつきました。和牛改良組合を始めとした地元の方の応援や関係者の方の熱心な対応があったことが決め手になりました。
Q 大田市で就農をされて良かった点は?
A とても牛飼いの仕事に集中でき、牛もストレスなく育つ環境です。
Q 苦労されてる点は?
A 場所探しに苦労しました。
Q 今後の目標は?
A 5年後には、50頭に増やしたいです。経営が軌道に乗ってきたら、就農希望者の受入、地元の小中学校の食育の場にも力を入れていきたいです。またITを活用した畜産業もやっていきたいです。
Q これから大田市畜産で新規就農を考えているみなさんにアドバイスをお願いします。
A 大田市はとってもいいところです。大きなお金をかけず、10年、15年後のビジョンをしっかり描きながらやっていくことが大事です。

Q 吉田さんは、和牛農家の後継者ですが、地元に帰って就農しようと思ったのはなぜですか?
A 色々な農家の方との交流などをきっかけに自分で農業をしてみたいと思いました。
Q 大変だったこと、やりがいを感じる瞬間は?
A 自分の思い通りにならないことや、病気など大変なことが沢山あります。最近は、徐々に子牛が育ち、また賞をもらい自信がついてきました。
Q 産地ツアーに参加の皆さんに就農をしていただく歓迎のメッセージをお願いします。
A (松本さん)大田市は住むにはピッタリな場所です。一度大田市に遊びにきていただけたら、また裏話やお伝えしきれなかったこともお話します!
A (吉田さん)大田市は、農業の産地としても魅力があり、地域の取り組みや行事もおもしろいです。お待ちしています!

知子さんに牛の紹介をしてもらいました。いろんな性格があり、個性があるそうです。
とても人なつっこくて、微笑ましく愛情たっぷりに育っている様子を見せていただきました。

◇参加者のみなさんからの質問タイム◇
Q  休みはありますか?旅行などいくことができますか?
A 頭の中では365日という意識はありますが、休日はあります。また、いくらかお金を支払えばJAや市が行っているヘルパー制度(代わりに餌を与えてくれる)を利用することもできます。
Q 完全放牧にあこがれていますが、可能でしょうか。
A 完全放牧の場合、1頭につき1haの場所の確保が必要。現実的に場所が難しいです。複合的なら可能であり、大田市でも行っている人はいます。
Q 県単独の助成制度、他県にはない独自の魅力はありますか?
A 産業体験という研修制度があります。期間は1年間、期間中、月に12万円の補助があります。県の補助としては、牛の導入事業(牛の増頭、1頭あたり10万円~15万円補助)やハード事業で牛舎の建設時に個人負担を軽減する補助制度もあります。
※いずれも、補助金の動向により変わることがあります。
Q 現在、大田市で空き牛舎はありますか?
A 現在はありません。よって新設の牛舎をリースにより建てるプランを提案します。

以上、大田市の畜産の産地から就農情報をお届けしました。しまね農業体験プログラムでのご来県をお待ちしています!