第4回 11月29日(日) 出雲市大社町 ぶどう編 ~第3弾~

<女性1人でも経営できる出雲のぶどう栽培>

「女性一人で農業を始めるのは、無理だと考えていませんか?」 そんなあなたに、具体的な農業デビューの道筋を示すことができるのが、「出雲のぶどう産地」です。

「第4回しまねオンライン産地ツアー(出雲ぶどう産地編)」では、女性農業者が実際に1人で、ぶどうを栽培している状況が紹介されました。現在の作業状況で始まったツアーは、女性農業者の「就農への道筋」紹介から始まり、女性が実践するぶどう経営の状況がパネルトーク方式でわかりやすく伝えられました。

最後には、ツアー参加者の皆さんからの質問に農家の方々が答えていくという展開です。出雲のぶどうは、女性が農業デビューするのに優しい産地であるということを、このリポートで紹介していきたいと思います。

-インデックス-

 

◇オンライン産地ツアーの開始
(女性の農業者、関係者がメインのツアー)

今回のツアーもJAしまねの荒木支店からの中継です。ここは、ぶどうハウスと住宅が混在する地域で、近くには「ぶどうの集出荷場」などがあり、出雲ぶどうの中心地となっているところです。

ナビゲータは、しまね農業振興公社の朝倉課長が務めます。

会場には、女性農業者(研修生を含む)や先輩農家、関係機関の皆さんが集まってくれました。ツアー参加者の質問に何でも回答できる体制を整えていただきました。

今回メインとなる女性農業者3名、左から就農3年目の佐藤さん、真ん中が就農3年目の桑原さん、右が研修生の戸山さんです。

 

◇最近のぶどう園の状況
(女性農業者の作業風景)

まずは、現在のぶどう園がどのようになっているのか、どのような作業をしているのかという現地紹介です。この時期、ぶどうの収穫は終わり、秋から冬にかけての重要な作業が行われています。

https://youtu.be/BCMAd6oEIkc

【桑原さんのぶどう園での荒剪定作業】

桑原さんによると、
『この動画は、荒剪定(あらせんてい)作業の様子です。ぶどうの樹は毎年春に新しい枝が伸びて、その枝に実が付きます。毎年枝が伸びるわけですから、しまいには枝が茂りすぎて、病気が発生しやすくなったり、ぶどうの実も色づきが悪く品質が悪くなります。そこで余分な枝を切り落として、良い実を付ける枝だけを残すように剪定作業を行います。この荒剪定では、大まかに余分な枝を切り落としていきます。』
とのことです。

桑原さんは、19a(1,900㎡)のぶどう園の全ての剪定作業を1人でこなしておられます。全てを終わるのに半月くらいかかるそうですが、作業そのものは難なくこなせるけど、切り落とした枝の処理(運んで焼却)が大変だそうです。

 

◇「恋ぶどう」活動の紹介
(女性農業者・関係者グループの活動)

次は、出雲の女性ぶどう農家や女性の関係者による産地活性化の活動紹介です。(もっと恋しよ♡縁むすぶどうPJ)

「恋」、「ぶどう」、「出雲」などをキーワードに、SNSでの情報発信、イベントでのPR活動などによって、地元の方はもとより、観光客の方などにも出雲ぶどうの魅力を伝える活動を行っているそうです。女性ぶどう農家の皆さんは、とっても仲が良く、みんなで和気あいあいと女子忘年会なども行っているそうで、女性にとって農業に取り組みやすい地域ではないでしょうか。

 

 

◇就農への道筋紹介
(女性農業者がどうやって農業をはじめたのか?)

次は、いよいよ女性農家の就農動機やそこに至った道筋の紹介です。

1番手は、佐藤さんです。
佐藤さんは、就農3年目。1人でぶどう30aを経営しておられます。地元の農業法人でぶどう栽培に出会い、興味をもったことが自営就農のきっかけだそうです。

ぶどう栽培の魅力は、ひとつひとつ手をかけただけ、良いものができるということ。自分の作ったぶどうを食べてくれた人が「美味しいね」と言ってくれることが何よりうれしいとのことです。今後は、今の経営を安定化させ、さらに規模を大きくしていきたいとのことです。

2番手は、桑原さんです。
もともと農業には全く興味なく過ごされていたところ、出雲にUターン後、ぶどうを作っていたおじいさんから「ぶどう栽培をしないか?」と言われ、二つ返事で引き受けたのが、農業の始まりだそうです。

就農するかしないかで迷っている方からすると信じられないような始まりだったようです。今後は、半世紀以上続いてきた出雲のぶどう産地を次の世代まで引き継いでいきたいと思われているそうです。

3番手は、戸山さんです。
戸山さんは、令和3年4月から農林大学校の短期養成コースでぶどう栽培を本格的に学ぶ研修生です。ぶどうを栽培しようと決めたきっかけは、地元の農業法人で、「ぶどう栽培」に魅せられたことだそうです。

また、アルバイト先のぶどう農家で、ぶどうの房作りなどで女性の感性をいかせると感じたことも決断の決め手になったそうです。今後は、誠実にぶどう栽培に取り組んでいきたいとのことです。

女性の方1人でも、ぶどうで農業を始められる「出雲のぶどう産地」は、支援体制もしっかりしています。この点については、「出雲市就農パッケージ(ぶどう)」を御覧ください。

 

◇ツアー参加者からの質問コーナー
(農地やハウスの入手方法と経費は?etc)

最後に、ツアー参加者の皆さんからの質問に対して、会場におられる農家や関係機関の方々が答える形で、就農への様々な疑問への答えが導き出されていきました。

【Q.ぶどうの栽培技術は、どこでどのように学んだのか?】

A. 1年間、アグリビジネススクールと研修先の農家で技術を習得した。(佐藤さん)

A. 自分は、祖父のハウスを引き継いだので、近所の先輩農家にいろいろと聞きながら作業をして覚えていった。 また、JAに電話をすれば、指導員さんが来て教えてくれる。(桑原さん)

A. 自分はこれからなのだが、勤め先の法人でぶどう栽培の作業をしながら、農林大学校で1年間しっかりと学ぼうと考えている。 (戸山さん)

【Q.農地やハウスの入手方法と経費は?】

A. 研修先の農家とJAの協力で、デラウェア植栽済みのハウスと何も植わっていないハウスを借りることができた。自分はシャインマスカットが栽培希望だったので、デラウェアを切って植え替えを行ったが、すぐにでも収穫できるデラウェア園を借りられる可能性があるのは魅力だ。(佐藤さん) ※ハウス賃料は、園の状態にもよるが、年間3万円/10a程度

A. 今研修中だが、JAや普及部の方々に協力をしてもらって、現在探しているところで、研修が終了するまでには見つかると考えている。 (戸山さん)

A. JAでは、空きハウスの斡旋のほか、リースハウス事業も実施している。 これは、JAがハウスを建設して、年間30~40万円/10aのリース料金を払って利用してもらうもの。15年間リース利用していただいた後は、栽培者へ有償譲渡する仕組みになっている。(JA担当者)

A. 出雲は、ハウスぶどうの産地として、大きな面積を有しており、Iターンの人でも研修中から空きハウスを斡旋してもらえることが、大きな強みだ。早いひとならば、3~4年目で経営が軌道に乗っていくと思う。 (先輩農家の伊藤さん)

【Q.家事や育児と農作業のワークライフバランスは?】

A. 自分は、結婚しているが子どもはまだいないので、全く困っていることはない。1人で全ての作業をまかなえている。 (桑原さん)

A. 保育園に通う小さな子どもがいるが、夫や義理の母の協力を得ながら、育児と農作業を両立している。忙しい時期は、両立で疲れたと感じるときもあるが、一方で暇な時期もあるので、自分の時間をつくることもできている。 就農後も同じようにやっていけると考えている。(戸山さん)

【Q.女性1人でも、機械操作や力仕事はできるのか?】

A.消毒に使う動力噴霧機などは1人で使いこなしており、基本的に1人で作業をおこなっている。重たいものを運ぶというような作業も、そんなにはない。ただ、ビニールの張替えだけは、1人ではできないので、業者に頼んでやってもらった。 (佐藤さん)

A. ビニールの張替えを除けば、全て1人でやっている。 (桑原さん)

A. 農林大学校で、機械の扱い方などを学んでいきたい。 (戸山さん)

【Q.就農にあたっての初期費用は、どれくらいかかるのか?】

A.初期費用として50~100万円くらいかかった。ハウスは借りることができたので、初期費用はかからなかった。ただし、それに加えて生活費が必要。 (佐藤さん)

A.自分の場合は、祖父のぶどう園を引き継ぎ、ハウスも機械も必要なものは全て揃っていたので、初期費用はかかっていない。地元以外の人でも、ぶどう園を借りると同時に、機械なども譲り受けることができれば、かなり安く始められるのではないか。 (桑原さん)

A.経営する形態にもよるが、基本的には、軽トラ、動力噴霧器など必要最低限の装備を揃えるとすれば、中古機械なども選択して、50~100万円くらいは必要である。ハウスについては、収穫可能な状態のものが、年間1~3万円/10aで借りることができる。 ただし、農地を集約して一定の面積を確保する場合などは、古いハウスなどを修理して使うことなどが必要になり、200~300万円の費用がかかることもある。最初は、あまり大きなことを考えずに地道にスタートするならば、産地全体としては栽培を止めていく農家もあるので、ハウスは何とか手に入ると思う。あとは、当面の生活費と肥料・資材購入費が必ず必要になる。(先輩農家の伊藤さん)

【Q.ぶどう経営で、どれくらいの収入があるのか?】

A.どういう経営形態を目指すかにもよるが、自分は40aで始めたが、繁忙期に1人アルバイトを雇って、年間700~800万円の売上があり、所得はその半分弱といったところだった。加温(冬場のハウス暖房)で高い時期に出荷するシャインマスカット栽培ならば、1人の経営で売上は、1,000万円程度になるのではないか。もちろん、この場合加温の経費などが多くかかる。品種や出荷時期によって、いろいろと変わってくるが、いずれにしても、様々な経営方法があるので、関係機関の人などと相談してほしい。 (先輩農家の伊藤さん)

他にもいろいろと質問がありました...

【注】今回の「答え」は、様々な営農条件の上になりたったものであることをご注意ください。

 

◇まとめ
(なぜ、女性1人でもぶどう経営を始められるのか?)

以上、今回の産地ツアーで得られた情報をまとめると、以下のようになります。(ナビゲーター)

  • ぶどうの栽培作業は、極端な重労働がなく、女性1人の体力でも十分にこなせる。加えて、収穫後の選果作業などは、繊細な感性が要求され、女性に向いている。
  • ハウスのビニール張り作業は、1人で行うことはできないが、ぶどう部会青年部などが互いに助け合う仕組みをもっている。
  • 出雲に全く知り合いがいない人でも、研修中に「空きハウス」の斡旋やリースハウス事業の紹介を関係機関がしてくれるなど、農地探しを中心とした支援体制が産地全体としてしっかりできている。
  • アグリビジネススクールや農林大学校、あるいは先輩農家での研修により、体系的にぶどう栽培のノウハウを習得する仕組みが整っている。

 

◇エンディング
(農業体験プログラムの紹介など)

ツアー参加者からの質問も一段落したところで、エンディングです。
ツアー参加者の皆様へは、後日「出雲産のシャインマスカット」が送られることが伝えられたあとに、当公社が主催する「農業体験プログラム」と、次回のオンライン産地ツアーが計画されていることが紹介されて閉幕となりました。

「百聞は一見にしかず」といいます。ぜひ、「農業体験プログラム」を使って、出雲のぶどう産地をあなたの目で確かめ、あなたの肌で感じ取ってみてください。私達が心込めてご案内いたします。

*農業体験プログラムとは、農業をめざす方々が希望される品目や産地の状況を体験を通して理解していただくための取組です。1泊2日程度の日程で、公社相談員が適切な体験先をご紹介し、当日も同行します。詳しくは、こちらを御覧ください。

【リポート閲覧のお礼と資料送付サービス】

本リポートを最後まで閲覧いただき、誠にありがとうございました。
このリポートにより、「出雲ぶどう産地」での就農に興味をもっていただけたでしょうか?

ツアー当日の資料を以下よりご連絡いただければ、紙またはPDFで送らしていただきます。
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