第18回 6月12日(日) 隠岐の島町 とっておき農業編(畜産・園芸)
隠岐の島町は、本土の松江市から約80㎞北に離れた、日本海に囲まれた島です。隠岐諸島は主に4つの島から形成されており、1番大きい島後と言われる島になります。島の中での移動には、乗用車が必須です。スーパーやホームセンターなどもあり、日常生活を送るのに不便することはありません。
隠岐は、古くから肉用牛の飼育が盛んな地域で、島の重要な産業になっています。
とっておき農業編では、「和牛の繁殖経営の自営就農者の募集」、「島内の消費者に向けた野菜の生産して頂ける新規就農者募集」にスポットをあて、畜産と園芸の2本立てでご紹介しました。
左から隠岐支庁の梶谷さん、隠岐の島町役場の河北さん、JAしまねの池添さん、司会は公社高橋のメンバーでお伝えしました。河北さんより隠岐の島町の概要を、梶谷さんより和牛の繁殖経営の説明をしてもらいました。繁殖経営とは、母牛を飼育してそこから生まれた子牛を販売することで収入を得る産業、隠岐の島町には、町が管理する公共牧野という放牧地があり、これを利用しての繁殖経営が盛んに行われています。放牧により低コスト生産や省力化が図られています。
現場中継では、隠岐の島町にある岬牧野という放牧地から和牛繁殖経営を行っている村上さんご夫婦に隠岐支庁の森さんがインタビューをしました。村上さんは、隠岐の島町内で建設業を経営されていますが、平成18年から会社ぐるみで和牛繁殖業に参入されました。
Q 現在の経営の状況は?
A 繁殖牛を72頭飼っています。従業員7名で牛舎3棟、放牧場50haを使って管理しています。
Q 放牧の良い点は?
A 牛舎で飼うより手間やコストがかかりません。足腰の丈夫な牛が育ちます。またいい牧草をお腹一杯に食べた牛はしっかりお腹ができて毛並みもツヤツヤです。牛たちもストレスなく育ちます。
Q 放牧の作業はどのような事がありますか?
A 異常の有無を調べてトラックに乗せて放牧場につれて行きます。牛を放した後も餌やりや異常がないかの確認をします。
Q 牛を放して終わりではなのですね…そういった管理の技術はどうやって身につけられたのですか?
A もともと突き牛を飼っていました。研修などはしていません。日々の管理で迷ったときは、巡回で来られた獣医に相談したり、JA、県の普及員の方などに聞いて日々勉強をしています。最近は、ICT機器の活用で技術を補っています。
※突き牛…牛同士が角を突き合わせて闘う闘牛のこと
Q ICT機器はどのようなものを利用していますか?
A 発情の状態の通知が分かる首輪です。他の作業もあり牛を一日中管理するのは難しいので、ICTを使い発情情報や個々の牛の情報をスマホで管理しています。放牧場にいて、この牛どんな牛だったか分からなくなった時もすぐに携帯で確認できるので、それぞれの牛のことを覚えるのに役に立っています。
Q 牛飼いをしていて大変な時はどんな時ですか?
A 家族同様のように飼っているので、死んでしまった時は悲しいです。最近は、飼料価格の高騰でやりくりに苦労しています。
Q 逆に良い点は?
A 新しい命が生まれる瞬間に日々立ち会えることです。同じ牛でも性格が違いそれを理解して牛との関係が築けた時に喜びを感じます。
Q 中でも隠岐の島町で畜産をする良さはなんだと思いますか?
A 自然豊かで公共の放牧場があり、草も豊富です。また天災も少なく、イノシシやシカの被害がありません。
Q 実際にどんな人が牛飼いに向いていると思いますか?
A 温厚な人。生き物相手なので思い通りに行かない事も多々あります。牛のペースに合わせることができる人が向いています。お母さん牛も女性、優しく接してくれる人が良いと思います。
Q 島に住んで良いところは?
A 自然豊かな所で子育てをするにもとても良い環境です。島民になると船や飛行機の運賃補助もあるので、思ったより本土との行き来がしやすいです。Amazonもわりと早く届きますよ(笑々)
Q 住むにあたり注意点などは?
A 地域の人との繋がりが強い所、自治会や地域の人との交流がわずらわしいと思う方には少し大変かもしれません。
Q 研修にはどのような人に来て欲しいですか?
A やる気があり、素直な人です。私たちの交流を楽しんでくれる人が良いです。
Q 産地ツアー参加の皆さんへ一言お願いします
A 隠岐の島町の畜産のためにも新しい力が必要です。一緒に隠岐の島町を盛り上げていきましょう!住むにはとてもいい島です、是非一回来て下さい。また日々の牛飼いの情報をInstagramで、おもしろおかしく掲載していますので是非のぞいてみてください!
▶fusanonto (寿畜産 村上建設)寿門
ここからは、園芸の施設野菜の就農情報をお伝えしました。
JA池添さん:隠岐の島町で販売されている野菜の多くは島外から仕入れたものです。鮮度が劣ったり、完熟しないまま発送した商品が売られたり…“できれば島内産の野菜が食べたい!”という町民の声に応えるため、関係機関が一団となり、町内産の野菜を生産する新規就農者の募集に力を入れています。また、一定の品質やロットが確立されたものを「隠岐育ち」というブランドに認定する取り組みも行っています。
▼実際の栽培の様子や生産者のコメントを事前に取材した動画をご紹介しました。
隠岐支庁 松浦さん(左)、 園主の柴さん(右)
柴さんは、隠岐の島町出身。H23年に県外からUターンし就農。島内向けの野菜の生産をしています。
昨年度よりハウス20aを使いトマト、キュウリ、イチゴなど本格的に参入されています。
現在は、キュウリの収穫作業をしています。収穫の様子、また管理方法について見せて頂きました。
Q 昨年から青果物の生産に本格的に参入したきっかけを教えてください。
A 隠岐の島町では島内の野菜の生産量が少なくスーパーにあるのは、ほとんど島外産のもの。就農当時にあまった苗を自分で育て、とれた野菜を直売に売っていたところ、想像以上に売れ行きが良く需要を感じました。島内産のものをもっと増やしたいと思っていた頃にリースハウス事業も始まり、後押しになりました。
Q 出荷先は?
A 地元のスーパー、直売所、島前地域や学校給食にも出荷しています。
Q お客さん、バイヤーさんからの評価は?
A お客さんからは、品質、味も高評価です。バイヤーさんからは、店にもっと置きたいとの要望があります。
Q 園芸に取り組む人へメッセージ
A 隠岐の島町では、これまで本格的に野菜生産をする人が少なかったですが、現在、県、町役場、JAなどの関係機関が一緒になり力を入れている所です。まだまだ始まったばかり。自分たちが1から作りあげる喜びややりがいをとても感じます。将来的には島のものは島で作りたいです。“島で育て、島で売る!”をテーマに隠岐の島町で一緒に園芸で盛り上げましょう!
隠岐支庁の松浦さんから農地取得に関する実態について説明いただきました。詳細については、下記のスライドを参照ください。
参加者のみなさんからの質問タイム
Q 本土との光熱費の違いは?
A 電気、水道は本土に比べて少し高めだが、生活に支障が出る高さではない。
Q 現在のウクライナ紛争との関係で飼料の高騰や国内の消費の落ち込みなど、畜産経営の経費と売上はどのような傾向にあるか?
A 現在、園芸、水稲の肥料の値段、畜産の飼料も上がっている状況。子牛の価格について、隠岐の島町では家畜市場を年に3回行っているが、今のところ価格の影響はない。今後の影響について動向を注視していかなければならない。
Q 給付金の年齢制限については?
A 国の補助金は、50歳未満。島根県においては、50歳以上の支援制度がある。
以上、隠岐の島町から就農情報をお届けしました。
就農相談ミニツアー、しまね農業体験プログラムでのご来県をお待ちしています!
※ツアーの様子はこちらでも紹介されています。
▶普及情報:第18回しまねオンライン産地ツアーin隠岐の島町~とっておき農業編~