第23回しまねオンライン産地ツアー報告
第23回 6月10日(土) この夏行きたい産地編(雲南市・飯南町・邑南町)
この夏行きたい産地編では、邑南町のブドウ、飯南町のパプリカ、雲南市のアスパラガス3つの産地からお伝えしました。スタジオからは、島根県の小林さん(右)、吉岡さん(中央)、公社の高橋(左)でお伝えしました。
【邑南町】
最初にご紹介する邑南町では、島根県オリジナル品種“神紅”の産地化を目指して、新規就農者への積極的な受け入れ体制を整えています。充実した町独自の研修制度『おーなんアグサポ隊制度』も魅力の一つです。研修期間中からリースハウスを使用した定植を行うことでスムーズな就農をサポートしています。
現場の中継は、日向さんのハウスからお伝えしました。日向さんは、おーなんアグサポ隊を卒業して、今年4月に新規就農され、現在は20aのぶどう栽培に取り組んでいます。
園主 日向さん(左)、県西部農林水産振興センター中尾さん(右)
Q 今、どんな作業にとりくんでいますか?
A 神紅の摘房、摘粒の作業をしています。木によって実をつける数が決まっているため、不要な実をとっていきます。ぶどうの粒がこみあった部分や生育が悪い小さな果粒を一粒単位で間引いていきます。これが摘粒作業になります。
また、ぶどうの枝葉を管理するために、テ-プナ-という機械を使って枝つるを支柱にとめていきます。Q 農業を始めたきっかけは?
A 子育てが一区切りし、自分のために何かしたいと思うようになっていた頃、邑南アグサポ隊の募集を見て、“何から初めていいか分からない人でも”というフレーズを見て自分にぴったりだと思い応募しました。Q どうして邑南町でブドウという選択をしたのですか?
A 邑南町のアグサポ隊の研修を受けたら、就農時にはリースハウスが利用できること、また研修中に農大の授業を受けることができるのも未経験な私としては心強く感じました。Q おーなんアグサポ隊で学んだ栽培技術はどうでしたか?
A 私が入ったときのアグサポ7期生は全て非農家出身で農業の未経験者の方でした。アグサポ隊は学校ではないので、栽培のポイントは教えてもらえますが、様々な事を自分達で考えて行動しなければならないことが就農に向けての訓練になったと思います。研修なので失敗して学ぶという経験が良かったと感じています。Q お一人の作業で不便することはありませんか?
A 一人で出来ない作業などは、同期の人に協力してもらいながら行っています。Q 今後の目標は?
A 就農5年目には、20aで売上800万円を目指しています!Q オンライン産地ツアーに参加されている方へメッセージをお願いします。
A 邑南町は、自然豊かで美しいものが沢山あるところです。私はとても気に入って住んでいますが、気に入るポイントは人それぞれ違うと思うので、気に入った方は是非一度見に来ていただきたいと思います。【摘粒作業の様子】
【飯南町】
2つ目にご紹介する飯南町は、冷涼な気候を生かしたトマト・パプリカの栽培についてお伝えしました。町全体の標高が400~500メートルの高原地帯にあり、水もきれいな地域なので高品質なトマト、パプリカが作られています。また需要の高い夏秋期に出荷が可能な点も強みです。飯南町もリースハウス制度があり、初期投資額の軽減を図っています。
また、定住支援策にも力をいれており、田舎暮らしを考える人たちには大変注目されている地域でもあります。現場の中継は、中野さんの畑からお伝えしました。中野さんは、2012年に関西からIターンで飯南町に移住され、町内で研修後、2014年に就農されました。
園主 中野さん(左)、飯南町役場 落合さん(右)
Q 飯南町で就農することを決めた決め手は何でしたか?
A 元々妻が、田舎で農業をやりたいという思いを持っており、情報収集する中で、飯南町に興味を持ちました。実際に足を運んでみて、環境や地域の熱意に惹かれて飯南町で農業を行う決意を持ちました。Q 栽培品目としてパプリカを栽培するメリットは?
A 日本で売られているパプリカのほとんどが輸入もの、国産のパプリカが非常に少ないことから、高い需要、高単価での取引などから伸びしろが期待できます。Q 飯南町に移住されて、大変だったことは?
A 冬の寒さは体感して大変さが分かりました。また地域の付き合いも重要ですが大変な面もあります。Q 就農されて10年弱経過されましたが、農業経営面の実態としてはどうですか?
A 市場を中心に出荷していますが、収量や市場単価に左右されるため、常にリスクは感じています。一定の収入が約束されているわけではないので、きつい面もありますが自分次第で自由にできるというところはメリットです。Q 現在、どんなお住まいに住んでいますか?
A 移住当初は、町から紹介してもらった空き家に住みました。その後は町の定住促進住宅に住んでいます。この定住促進住宅は、セミオーダーで25年定住すると土地、建物が譲渡されるようになっています。Q 栽培を行っていない冬場にはどんなことをしていますか?
A 次年度の準備やスキー場等でのアルバイトをしています。Q 研修生を受け入れておられますが、教えるのに何か工夫されている点は?
A 技術面だけでなく、地域づきあい等生活していくための心構えなどを教えています。Q 中野さんは飯南町パプリカの生産のリーダー的な存在ですが、今後どのような産地にしていきたいですか?
A 現在は、市場の需要に応えられていないのが現状です。今の生産者の規模拡大、収量向上はもちろん研修生を継続的に受け入れて就農に導くことで、上手く循環できる産地にしていきたいと思っています。Q.最後に中野さんにお尋ねしますが、これから飯南町で新規就農を考えているみなさんに、アドバイスや知っておいてほしいことがあれば教えてください。
A.まずは行動。短期(産地ツアー)でも一度来てみて実際に地域や農業を感じてもらいたいです。自分たちもIターンの先輩として積極的にサポートしたいと思っています。
現在、中野さんのところで研修をされている江嶋さんにインタビューをしました。
江嶋さんは、昨年度関西からIターンで飯南町に移住され、現在県農林大学校に就学しながら、来年度の就農に向けて技術研修中です。
Q 現在は、就農準備としてどのようなことをしていますか?
A 役場や普及部、地域の方と就農地の選定や就農計画の作成を行っています。Q .実際に研修を行う中で、就農に向けたイメージは膨らんできていますか?
A 昨年度、産業体験で1年経験し、作業の流れが分かりました。今年1年研修し、自信をもって就農できるよう技術を身につけたいです。
【雲南市】
雲南市非公式キャラクター“雲子ちゃん”(左)、雲南市 山本さん
3つ目にご紹介する雲南市からは、雲南市の山本さんからご紹介してもらいました。雲南市は2年前からアスパラガスの出荷が開始されたばかりの新興産地です。また道の駅やスーパーの直売コーナーに出荷する産直活動が大変活発な地域です。中山間産地の農村部にありながら市街地のアクセスが良好で、生活利便性が優れている地域でもあります。
図はアスパラガスの栽培スケジュールになります。アスパラガスは病気に弱いためビニールハウスでの栽培が基本となります。また一度植えたら10年間収穫が可能という野菜としては少し変わった特性を持っています。
雲南市では、リースハウスの貸し出しは行っておらず、新規就農者の皆さんには就農当初からご自身のハウスを所有することを提案しています。その分初期投資額が大きくなるため、ほとんどの場合は公的資金を借りることになりますが、その返済額とリース料は概ね同等であると考えています。
生産振興に着手したばかりですが、出荷調整については、当面は近隣の先行産地JAしまね斐川地区本部の調製ラインで出荷していただく体制を整えています。このほか、雲南市は直売活動が大変活発な地域で全国でもトップレベルにあり、自分が考える価格や商品形態で出荷することもやり甲斐のある農業の一つになると思います。
参加者のみなさんからの質問タイム
Q 気候変動の影響について知りたい
A (飯南町 中野さん)
冷涼な地域とされているが、7月、8月の昼間は平地と変わらず33℃~35℃という暑さ。ハウス内はさらに暑く40℃と真夏の栽培管理においては難しくなってきたと感じている。
パプリカにおいての暑さの影響ついては、マルチシートの中の土の温度が高温になりすぎると根が弱るため、病気になりやすくなる。Q ぶどうについて、5年くらい収益がない期間においての生活費はどうしているのか。
A(邑南町)
ぶどうにおいて、3年目までは収穫が出来ない。3年目から少しずつ、4年目、5年目になると1番収量が上がる。邑南町のアグサポ隊は、給付を受けながら研修期間の3年間で木をある程度育て、4年目に就農する頃にぶどうが少しずつ採れるようになる、未収収穫期間をある程度カバー制度となっている。収量が1番収穫できる時期までアルバイトをして収入を確保するケースが多い。Q 神紅の栽培について、難しい点は?
A 神紅は粒の形がアーモンド状なので、将来どういう形になるのか予想がつきにくいため、綺麗な形を造ることが難しい。Q 島根県全体における品目について知りたい
A 県全体として、水田で野菜を栽培する取り組みをしているところで、品目としては、アスパラガス、ミニトマト、キャベツ、白ネギ、ブロッコリーなど。また有機農業においても広く進めている。
以上、邑南町、飯南町、雲南市から就農情報をお届けしました。
8月に開催する『ご縁の国しまね 就農相談ツアー』、しまね農業体験プログラムでのご来県をお待ちしています!