新規就農者紹介全文(邑南町で半農半蔵人により大好きな酒を造りだしたIターンのNさん)
〇就農者(Nさん)のプロフィール
・年代:20代後半
・就農地:邑南町
・定住の種別:Iターン 【出身:兵庫県】
・就農形態 半農半蔵人(半農半X)
・営農作目 酒米、野菜(広島菜、キャベツ、スイートコーン等)
〇紹介文
【きっかけ】
兵庫県の出身で、地元の自動販売機のベンダー会社に勤めていた。その時に東日本大震災があり、商品が届かなくなり、会社のこの先がわからないということで別の仕事を考えた。
選択肢として、まず農業があった。もともと家も農家ではなく農業のかかわりはなかったが農業がやりたかった。自分で食うものをやっていれば何があっても強いと思った。島根県、ことこのあたりは災害に強いと思いそれも選んだ理由の一つ。
そこで大阪で開催された就農相談会に参加したが、当時は給付金のような国全体で統一的な支援はなく、自治体ごとに支援内容が異なっていたため、条件が良いところを探した。その中で島根県が良かった。
島根県には就農の仕方にもいろんなプランがあった。特に半農半蔵人を勧められているのを知り、自分はもともとお酒も好きだし、例えば農業で酒米をつくって、その酒米でお酒がつくれれば面白いのでは思い島根での就農を決めた。
島根県内では当時半農半蔵人を勧めているところが何市町村かあったが、邑南町が自分にあっているというか、良さそうだったので決めた。
【農業について】
就農する時点では、将来どんな就農するかはかっちりとは決めてはなかったが、何とかなるだろうとおおざっぱな感じで決めた。
産業体験はUさん(邑南町)のところでやって、その後半農半X事業に入ってからは、Hさん(邑南町)のところで研修。この年から酒蔵に入った。
稲作をしようと思った場合、ある程度の面積が必要であり、たまたまHさんがこの一帯を広くやっておられたので、将来的には基盤を継ぐというところから入った。(結果あまりうまくいかなかった)
現在は、野菜がメイン(広島菜、スイートコーン、きゃべつ)。あと酒米をちょっとだけやっている。これを広げていきたい。
具体的には酒米45a。酒蔵で造るタンク2本分くらい。品種は「改良雄町」を作っている。酒蔵に納める農家では自分だけがこの品種。五百万石、佐香錦が多い。変わったのがいいかなと思ってやっている。
酒蔵では年間で40t作っている。自分の米が1.8t(58俵)くらい。
最終的には野菜をやめて水稲1本でやっていきたい(混ざるといけないので酒米だけにしたい)。
【半蔵人について】
今シーズンは10月16日が最初の勤務。
10月の間は仕事のある時間だけで大体週5~6ペース。
11月から3月末までほぼ出っ放し。週6.5日勤務で日曜日が半日休み。1日の仕事時間は7時半から5時まで。
野菜をやっていると冬でも若干仕事が残るので畑の仕事もやっている。そのこともあり稲作に完全移行すればきっちり分けることができる。
酒蔵には23歳の時に入って5年が経った。
小さい規模の蔵元であることから全員でいろいろな作業をするようになるので、杜氏の指示にしたがって最初からほぼすべての作業工程に入っていた。その中でも若干やることが増えてきた。
もちろん最初から出来はしないし、どんな仕事があるかわからないがやるしかなかったい。そんなに難しいわけではないが覚えることが多く、細かいことが多い。
酒蔵では1シーズンでタンク(1本2,000リットル)に33本か34本仕込む。11月初めから週に2本ずつ仕込んでいって、最後に終わるのが3月16日。今19本くらい。
以前から社長にずっとやりたいと言っていたが、今年はタンク一本(2400本くらい)だけはあるが、自分で作った酒米を使って、自分で設定して2月末に仕込みをやらしてもらえることになった。
ラベルの裏に「酒米生産者 N」とネームを入れたい。お土産にはもってこい!
ちなみに自分が飲む量は、最近は控えめにして1日三合くらい。
【半農半蔵人を実践してみて】
蔵人が3月いっぱいなので、蔵が終わればすぐに田んぼの準備とかいっぱいある。
また、この前の大雪でハウスがつぶれてしまったのだが、建てている時間がない。
池月に出勤するときは大丈夫だったが、終わって帰ってから雪を落とそうとしてとんとんとしたらつぶれてしまった。もう少し優しくすればよかった。冬場にそういったところも手が足りなくなる。
仕事自体は辛いが、同じ辛いことなら自分がやりたいことがまだ楽しいのではと思いやっている。
好きなことをやっていると辛くならないほど人間的にはできていないが・・。
農業の方も辛いが楽しいところもある。興味深く、面白い。
半農半蔵人を実践するのであれば、野菜メインでやる場合は冬の仕事ができないので、やる前にXのチョイスと作付け内容をしっかりと考えた方が良い。
また、蔵元側にも就業形態はいろいろあると思う。酒蔵のように冬場出っ放しの場合もあるが、そこまででない場合もあるし、逆に年中酒を造っている蔵元もある。自分のところより長期間の9月から6月までの蔵元もあるが、その代り休みが結構ある場合も聞いたことがある。
ただ、どこも人が足りていないと思うので、マッチすればいいかなと思う。
地酒は地方にあるからこそ価値があると思う。その意味で半農半蔵人というのは魅力的。
【酒造会社代表取締役より】
とても頼りにしている。杜氏(社長の息子)も今後一緒にやっていきたいと言っている。
どんどん自分で吸収してやっている。
味もわかるようになってきて期待している。今年度の利き酒大会に出場し活躍した。(※)
半農半蔵人という形は、通年雇用できない自社のような小規模の蔵人にはとてもマッチしている。本人も農業が好きであり、今の形はとても良い。
このような形であればもっと雇っていきたい。
(1日3合くらいに控えているという本人談を聞いて)そんなわけない、放っておけば1日一升は飲む。